1対1のレッスンの際の動画です。上手い、下手はさておき、期せずして興味深い動画が撮影できましたので公開することにしました。

 

DBS(脳深部刺激療法)の手術後、はじめてのレッスン。オフ(薬が切れてしまった状態)になってしまったものの、以前のようにまったく動けないほどのオフではなかったため、いつものようにレッスン最後に動画を撮影してみようということに。時間もなかたったため、不安は残るもののとりあえず、ということで。

 

音楽が始まり踊りだすと、スイッチが切り替わったかのように踊れるんですねー!!ダンス前後とは明らかに歩き方、動き方がが違うのです。まぁ、不思議な光景ではなく、これまでよく目にしていた光景ではあったはずですが、自分の動画を帰ってからあらたためて観て、こんなに顕著だとは思ってもみませんでした。

 

音楽が、ダンスが、タンゴが、パーキンソンン病のオフ症状に有効なことを身をもって証明したという動画です。

同じ病をもつロベルト氏(下記参照)とは、共通の知人にいただいたご縁でかれこれ4年。いつか彼の歌で踊ってみたい!そんな想いが、人と逢うことさえままならないこんな時期に叶うなんて奇跡に近い。

 

 横浜と大阪。当初はすべてリモートで進める予定だった。それはコロナ渦ということもそうだが、お互いの身体のことを思えば、どちらが移動するにせよ負担が大きいからでもある。進捗状況を連絡しあいながら準備を進め、こちらの撮影を終え、最後に控えたロベルトの撮影の日、急に思い立って大阪へ向かうことに。そう心が決まると、どこで止まるかわからない自分の身体への不安などどこへやらなのが不思議。

 

しんどい身体に鞭打ちながらの撮影、何度となく繰り返し求められる同じ場面の合間に休む暇はなく、それでも音楽とカメラが回り始めると彼の表情は一変、別の世界に入り込んだように熱いものが全身から溢れ出す。それを見ているこちらも引き込まれてしまう不思議なパワーを感じた。

 

体力の限界でやむなく撮影は終了。自宅に戻ってから、彼はギターと優しく甘い歌声で私達を歓迎してくれた。そしてそれに合わせて踊る。なんて贅沢で満ち足りた時間。

 

音楽を生業とするプロと一緒にするのはおこがましくて恐縮ではあるが、伝えたい想いは同じだということを肌で感じることができ、やっぱり人と人とは逢ってなんぼだと実感する。

 

まぁ、そんな裏話も知ってもらえたら、また違う味わいもあるかと。ひとつの作品が出来上がるまでにはいろんな人に関わってもらったり支えてもらったり。今回からハイスペックになった新しいカメラに翻弄されながら長時間にわたって撮影をしてくれたカルロス、打ち合わせから撮影当日にいたるまで細部にわたって長い間お付き合いいただいたロベルトの献身的パートナーのMakoさん、撮影当日大事な薬を忘れてしまい、急遽薬持って飛んできてくれた同病仲間のOさん。そして、タンゴのみならず、表現すること、ひとつのものを作り上げることのよろこびや人生の楽しみ方を教えてくれた上に、こんなに素敵な作品に仕上げてくれた我が師匠Shinjiさん。

 

いろんな想いがこの曲を軸に重なり合って形作られている。そんなバックグラウンドも感じながら味わってもらえたらと、コロナの渦中より願いをこめて。by Kaori 「ロベルト・デ・ロサーノ(Roberto De Lozano)」 アルゼンチン出身。弱冠15歳でプロデビューし、 21歳で南米最大のフォルクローレの祭典、コスキン音楽祭で最優秀歌唱賞を受賞。その後音楽の幅を拡げるためにメキシコへ渡り4年間の活動後97年に来日。タンゴ、フォルクローレ、ラテンバラードなど幅広いレパートリーを持ち、日本で数少ないアルゼンチン人歌手として活躍してきた。 02年から三年連続でサッカーの親善試合「キリンカップ」にてアルゼンチン国歌を独唱する栄誉を与えられる。 若年性パーキンソン病という難病と向かい合いながらも、前向きに自分の歌を通じて世界中の悩みを抱える人々に夢と希望を与えて行きたいと願っている。そしてスタイルに囚われない表現豊かで甘く柔らか、かつ熱く力強い歌声はジャンルを超えて多くの人々の胸を打つ。