タンゴセラピーを通して実現したいこと。代表の吉澤香と研究実施者の阿部田恭子(キャサリン)が語ります。
~すべての人が誰かとつながり、
温かく影響を与え合いながら
共存・共生していける社会を目指して~
■吉澤:
「アルゼンチンタンゴはパーキンソン病に効果がある」私もキャサリンも、それを広めたくてレッスンや研究活動しているわけだけど。効果っていうのは「症状が緩和・改善される」っていうだけの意味ではないんだよね。
■キャサリン:
そうそう。踊りの場に出ていくことで他者と出会う。パートナーと触れ合い、お互いの呼吸を感じ合う。そういったことで他者とのつながりを回復する。それ自体が、精神的にとても良い影響を与えるの。病気であるかないかに関わらず、人は「社会とつながっている」という実感を持つことで人生の幸福感が高まるから。
■吉澤:
体が痛いとか苦しいという理由だけでなく、「病気であることを知られたくない」そんな気持ちから閉じこもりがちになる人もいるよね。そうするとどんどん孤立しちゃう。
■キャサリン:
人には病気を恥や負い目に感じてしまう気持ちって、あるんだよね。医療用語で“スティグマ”というのだけど。日本人にはこれが特に顕著。
■吉澤:
私が積極的にミロンガに行って健康な人たちと一緒に踊っているのには、「もっと外に出ていいんだよ」っていうことを身をもって証明したい気持ちもあるの。病気だからといって諦める必要なんてない。やりたいことをやっていいし、自分が人のためにできることだって、たくさんあるし。
■キャサリン:
初めは教わる一方でも、何度かレッスンを経験して慣れてきたら先生のサポート的な役割を担うことだってできるしね。初めて参加する人に簡単なステップを教えたり、安心してチャレンジできるように声掛けしたり。実際、香さんはそうしてるじゃない? 参加者であり、ボランティアスタッフでもある。「自分が誰かの役に立っている」と思えることも幸福感向上になるんだよ。
■吉澤:
どちらかが与えるだけ、受け取るだけじゃないんだよね。病気の人も健康な人も、アルゼンチンタンゴを通して自然に通じ合い、お互いに何かを与え、受け取っている。それこそが私たちのやりたいことだよね。もちろんパーキンソン病だけにこだわるつもりもない。
■キャサリン:
そうだね。いまはまずパーキンソン病におけるタンゴセラピー効果のエビデンス獲得に注力しているけど、ゆくゆくは例えば発達障害や精神疾患のある人たち、認知症の人たちの施設への出張レッスンなども考えていきたい。その時には、香さんとか、先にステップを覚えたパーキンソン病患者さんたちがボランティアとして活躍するのもありでしょう?
■吉澤:
すごくやりたい!
■キャサリン:
それこそが、アルゼンチンタンゴを通した共存・共生だよね。
■吉澤:
本当にやりたいことがたくさんある! 持ちスタジオを確保して、安定的に活動できるようにしたいし。レッスン講師の絶対数が日本には全然足りないから、講師の育成もしたい。全国各地で「踊りたい!」と思った人たちが自由に踊れるように。
■キャサリン:
オンラインでのエクササイズだけじゃなくて、やっぱり実際にパートナーと組んで踊るのが一番楽しいしね。人と信頼し合い、コミュニケーションを取ることの喜びが味わえる。それに体を支えてくれる相手がいることで一人ではできないステップも試すことができて、症状改善・緩和効果もずっと高くなる。
■吉澤:
一緒に踊る人がいてこそ、タンゴなんだよね。
■キャサリン:
タンゴそのものが社会とつながる活動だからね。
■吉澤:
病気の人も健康な人も、お年寄りも若い人も子どもも、誰もがアルゼンチンタンゴを通して人生を豊かにしていける。そんな世の中を実現したいよね。踊るだけじゃなくて、座って音楽を聴いている人がいてもいいし、踊りを見ながらお酒を楽しんでいる人がいてもいいし。それぞれの自由な楽しみ方で。
■キャサリン:
アルゼンチンタンゴの魅力は奥深いもんね。
■吉澤:
私も、この先もずっとタンゴと付き合っていける方法、もっともっと考えるよ。病気になったことを含めて、すべては人生の必然だと思っているから、アルゼンチンタンゴと出会えたのも必然。とことん追求していきたいの!
■キャサリン:
私も、まずはタンゴセラピーの学習プログラムの成果を学会で発表して、日本でのエビデンスを獲得する。それから、ダンスセラピー全般の可能性をもっと追求していきたい!
■吉澤:
お互い、ブレずに突き進んでいきましょう!
<2021年 12月>